【2019.3.18放送】『運び屋』をもっと楽しむための課題映画3選!

【2019.3.18放送】『運び屋』をもっと楽しむための課題映画3選!

宇多丸:
先週金曜日のムービーウォッチメンで扱ったのは、クリント・イーストウッド監督・主演の最新作『運び屋』。この映画をもっと楽しむための作品をご紹介いたします。

ということでね、(音楽を聞きながら)もうノリノリですね。『運び屋』は、クリント・イーストウッドが監督・主演を兼ねた作品としては11年ぶり。その前の作品が2008年の『グラン・トリノ』という作品なんですね。で、ニック・シェンクさんという、脚本を書いているのは同じ人で。そのニック・シェンクさん自身が、「『グラン・トリノ』の主人公のウォルト・コワルスキーさんと今回のアール・ストーンさんは裏表の関係だ」みたいなことを言っているわけです。

つまり、どっちも朝鮮戦争に従軍して、戦争経験があって、非常に頑固なおじさん。で、家族とはちょっと距離がある。家族のことはわりとないがしろにしてきて、家族からも疎んじられているようなところがある。ここまではどっちも頑固親父で似てるんだけど、この『グラン・トリノ』のウォルト・コワルスキーさんは、わりと内にこもるというか、もう自分の世界に閉じこもって、わりと世界を敵視して、どんどんと変わっていくアメリカを見ながら、苦々しく思っている。

まあそんなおじさんが、モン族という、アジア系の移民の少年と出会って、少しずつ人種的偏見とかそういうものも乗り越えていって、最後に自分の人生の締めくくりをするという…本当に『グラン・トリノ』は素晴らしい作品なので。ぜひ熊崎くんも観たことがなければ観てほしいんですけども。

それに対して、今回の『運び屋』の主人公のアール・ストーンという爺さんは、似たような経歴だけども、やっぱり対照的ですね。人が違うと人生も違うんですね。とにかくチャラい!っていうね(笑)。チャラい、軽い。で、世間に対して、もちろん頑固者で、たとえばインターネットの台頭に乗り遅れちゃって、自分がずっとユリの栽培ですごく成功したんだけど、時代に乗り遅れてしまってそれも畳まなきゃいけないっていう。

そういう点では時代遅れの人ではあるんだけど、なんか状況の変化とか環境の変化に対してはわりと柔軟っていうか。わりと、「ああ、そう?ああ、はいはいはい」みたいな感じで柔軟に受け入れていくところがあって。その軽やかさがこの『運び屋』という作品の魅力でもあったりして。とにかくね、「このジジイ…!このジジイは…!」っていう、その呆れ苦笑いを全編で楽しむ作品ですね(笑)。ということでぜひ『運び屋』を観て興味を持たれた方は、『グラン・トリノ』も…で、もちろん『グラン・トリノ』がお好きな方は、その裏表の作品として今回の『運び屋』も、ぜひ観ていただけるといいかなと思います。

あと、イーストウッド。『グラン・トリノ』でもう俳優引退宣言なんかしていたんですけど、その後の2012年にロバート・ロレンツさんっていう、これは要するにずっとプロデューサーとして一緒に仕事をしてきた人が監督デビューするということで。その『人生の特等席』という作品で例外的に主演をいたしました。これ、熊崎くんなんかも多少興味を持たれるんじゃないですか?

熊崎風斗アナ:
僕、『人生の特等席』は観ました。

宇多丸:
ああ、観ましたか!あの、メジャーリーグのスカウトマンをやっているおじいさんの話ですよね。で、このキャラクターも要は時代遅れの頑固者で、家族とはちょっと折り合いが悪くて、それがリタイア期を迎えるにあたっていろいろとあって反省して、まあ家族と…特に娘と和解していくっていう、もう完全に今回の『運び屋』と、ある意味同じ話っていうか。そういうところはあると思うんですよね。で、やっぱり『人生の特等席』はなにが僕、観てよかったかっていうと、娘役を演じているエイミー・アダムスがすっごい魅力的でしたね。

エイミー・アダムスの中でも…これはたしか当時、せのちんさんが言っていたのかな?「エイミー・アダムスがいちばんかわいく見えるかもしれない」なんて言っていましたね。あと、エイミー・アダムスの相手役でジャスティン・ティンバーレイクが出てきてね。ジャスティン・ティンバーレイクとイーストウッドの絡みってなんか不思議な気がするんだけど…っていうね。

あとですね、もう1個。メキシコの麻薬組織と関わる話なんですよ、今回の『運び屋』っていう作品は。で、わりと全体にこのじいさんがのほほんのほほんと、その組織と関わっていくんだけど、我々、やっぱりメキシコ麻薬戦争物で、その麻薬組織の非情ぶりっていうか、「ボスとかそういう問題ですらない」っていうか…メキシコの麻薬組織の中心のなさが怖いっていうか、そういうシステムのあり方を描いた作品として、2013年のリドリー・スコット『悪の法則』という作品があって。これは非常に見る人を選ぶ映画なんだけど、僕はこれ、大傑作だと思っていて。ほとんどリドリー・スコットの最高傑作なんじゃないか?って思っているぐらいなんですけど。

ぜひメキシコ麻薬戦争…だからこの『運び屋』が終わった後、「えっ、でもさ、あの麻薬組織って、ここで許してくれるような人たちだっけ?」っていうのはこの、『悪の法則』とセットで見ると、より背筋が凍る思いを味わえるんじゃないでしょうか(笑)。といったあたりで、今日はこのぐらいにしておきましょう。

そして今週金曜の夜6時半からのムービーウォッチメンはポール・フェイグ監督の注目作。ポール・フェイグさんはわりとコメディー畑の人だったんですけども、「ああ、今度はシリアス・サスペンスに行くのかな?」と思いきや…の、『シンプル・フェイバー』をお送りいたします。

■宇多丸推薦! 『運び屋』の次にU-NEXTで観るべき映画
  • 『グラン・トリノ』クリント・イーストウッド監督/2008年
  • 『人生の特等席』ロバート・ロレンツ監督/2012年
  • 『悪の法則』リドリー・スコット監督/2013年

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