【2019.3.11放送】『女王陛下のお気に入り』をもっと楽しむための課題映画5選!

【2019.3.11放送】『女王陛下のお気に入り』をもっと楽しむための課題映画5選!

宇多丸:
先週金曜日のムービーウォッチメンで扱ったのは、第91回アカデミー賞で、オリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞した、鬼才ヨルゴス・ランティモス監督作『女王陛下のお気に入り』。この映画をもっと楽しむための作品をご紹介いたします。

ということで『女王陛下のお気に入り』、いろんなことを評の中でも言ったんですけども。U-NEXTでかなり関連作が観られるんです。まずは、ヨルゴス・ランティモスという、このギリシャ出身の監督の作品。今回はじめて人の書いた脚本でやって。一応、史実ベースということで、ヨルゴス・ランティモスの作品としては、今回、非常に観やすいんです。話が飲み込みやすいというか、わりと万人に勧めやすい。

カップルとかデートにはあまり向かないのかもしれないけど、わりと万人に勧めやすいというね。ちょっと性的な場面でエグい場面があったりしますけどもね。ぜひ奥さんと観に行ってはいかがでしょうか?っていうね(笑)。

熊崎風斗:
そうですね(笑)。

宇多丸:
なんだけど、これまでのヨルゴス・ランティモスさんはどんな映画を撮っていたのか?っていうあたりで、まずは出世作でもある『籠の中の乙女』という2009年の作品。これはある家族がいるんだけど、一見普通の家族に見えるんだけど、実はお父さんがその家族を家の敷地内から一歩も外に出さない、という状態でずっと暮らしている。「外の世界は怖いぞ、怖いぞ」なんて言って外に出さないというテイで暮らしているんだけど…みたいな話だったりする。

で、そこに1人、女性が中に入ってくることでバランスが崩れていく、みたいな話なんですけど。ただ、全てに共通しているのはそういう寓話性というか、実際の人間関係とかにもあるような支配関係、特に“性”を介在にした人間の支配関係みたいな、そういうのを割と寓話的に描く、というところでもすでにこの『籠の中の乙女』、非常にヨルゴス・ランティモスさんね…毎回ヨルゴス・ランティモスさんとエフティミス・フィリップさんという人の共同脚本で、すごく変わった世界観を作る。

その次の2015年の『ロブスター』。これも変わっているんだよね。これはもう完全に寓話っていうか、SFっていうのかな、なんか結婚をしていないやつはある施設に入れられて。45日間以内にパートナーを見つけられないと動物にされてしまうっていう、そういう世界で。それだけ聞くと「なにそれ?」って思うでしょう?そんなのは嫌だから逃げ出して、「独身者の森」っていうのがあって…そこは、昔のアンダーグラウンドな社会主義活動のメタファーみたいな感じで。たしかに「結婚しなくてもいい」っていう空間、コミューン的な暮らしが広がっているんだけど…そこはそこで、ものすごくファシズム的な世界だったりして。

だから、いろんなそういうメタファーがそこに入っている、みたいな変わった作品なんですね。『ロブスター』ね。あと、2017年の『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』。これはね、ジャンルとしてはサイコ・サスペンスチックなんだけど…これもたしかギリシャ神話みたいなのがベースになっていたりする。要は、自分がおかした罪に対して、ちょっと人間の尺度からすると理不尽とも思える代償を払わなければいけなくなる。で、いざその代償を払うという時に、非常に苦渋の選択というか、「選べ!」って言われるという、そういう話なんですけども。

話自体はすごくサイコ・サスペンス、ストーカー物のサイコ・サスペンス風なんだけど、だんだんだんだんね、「えっ、なにこの話? なにこの話?」っていう感じになっていく。で、クライマックスは「なーにー、そーれー!?」っていうね(笑)。ぜひ観てみてくださいね。

熊崎風斗:
気になる……!(笑)

宇多丸:
すごく面白い。普通にめちゃめちゃ面白いです。非常に寓話性に富んでいるし、難解っていえば難解だけど、普通に面白いっちゃあ面白い。だから、ヨルゴス・ランティモスさんってそういう感じ。あとね、評の中でも言いましたけど、今回の『女王陛下のお気に入り』は話がすごくわかりやすくて。要は「立場入れ替わり物」っていうのかな?ある、もともと偉い立場にいた人が、若い人に目をかけてフックアップしてあげるんだけど、その野心に燃える若い人がいつの間にか取って代わってしまう、みたいな。で、こういう話の一応代表的な作品として、1950年の『イヴの総て』という作品を挙げさせていただきました。

ジョセフ・L・マンキーウィッツさんという方の脚本・監督で。非常に、アメリカ映画の名作中の名作として知られる作品です。ベティ・デイヴィスさんという実際のハリウッドの大女優、名女優の座に、アン・バクスター演じる新進の新人女優が、最初はフックアップしてもらうんだけど、最終的にその地位を乗っ取ってしまう、というか。で、その乗っ取った後、さらに今度は、すごいちょい役なんだけど、若き日のマリリン・モンローがさらにその次の新しい女優として登場する、みたいな。『イヴの総て』、これはぜひ、この機会に観ておいて損はないんじゃないでしょうか。

あと、18世紀のイギリスの王室が舞台で、今回の『女王陛下のお気に入り』は、わりと自然光のみの演出というか…ちょっと一部は照明を使っているみたいですけど、たとえば夜なんかはロウソクの灯りだったらロウソクの灯りだけ、陽の光は陽の光だけみたいな、自然光だけを使ってやる演出をしているんですけど。こういう照明演出のルーツはやはり、これも18世紀のイギリスの金持ちが出てきますけども、『バリー・リンドン』というスタンリー・キューブリックの1975年の作品。

スタンリー・キューブリック、このためにNASAで使われていた、そういう技術を使ったレンズを開発したりして。当時、やっぱりデジタル撮影とかじゃないから、いろんな技術もまだない中で…フィルムってやっぱり、実際は撮影するのにすごく光量がいるものなんだけど、薄暗い明かりでもわりとクリアに撮れるような(技術を開発して)、それで18世紀の時の実際の景色の感じを再現してみせる、というのをキューブリックはやってみせたんですけど。明らかに『女王陛下のお気に入り』の照明演出は、『バリー・リンドン』ゆずりであると言えるんじゃないでしょうかね。

そんな感じで本日は以上、ヨルゴス・ランティモスさんの過去作3つと、『イヴの総て』『バリー・リンドン』の5作品をご紹介させていただきました。

ヨルゴス・ランティモス、まず1本どれかとっかかりにするとしたら、『女王陛下のお気に入り』がいちばん観やすいんだけど、これで興味を持った人はやっぱり、『聖なる鹿殺し』をちょっと観てください。すごい怖いし、キモいし…キモいんだよ、本当に!ヨルゴス、お前の映画、キモいんだよ~!(笑) これ、褒めているんですけどね。

そして今週金曜の夜6時半からのムービーウォッチメンは、クリント・イーストウッド監督・主演……結局、主演やるんじゃねえか!っていうね(笑)。最新作『運び屋』です。

■宇多丸推薦! 『女王陛下のお気に入り』の次にU-NEXTで観るべき映画
  • 『籠の中の乙女』ヨルゴス・ランティモス監督/209年
  • 『ロブスター』ヨルゴス・ランティモス監督/2015年
  • 『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』ヨルゴス・ランティモス監督/2017年
  • 『イヴの総て』ジョセフ・L・マンキウィッツ監督/1950年
  • 『バリー・リンドン』スタンリー・キューブリック監督/1975年

まだU-NEXTに加入していない方は
宇多丸まずは31日間無料トライアル

現在配信中の作品

    Copyright © 2018 U-NEXT Co., Ltd. All Rights Reserved.