【2019.2.18放送】『バーニング 劇場版』をもっと楽しむための課題映画4選!

【2019.2.18放送】『バーニング 劇場版』をもっと楽しむための課題映画4選!

宇多丸:
先週金曜日のムービーウォッチメンで扱いましたのは、インフルエンザで1週お休みして伸びちゃいましたけども、名匠イ・チャンドン監督による8年ぶり6作目…この20年間のキャリアでようやく6作目、『バーニング 劇場版』。この映画をもっと楽しむための作品をご紹介いたします。

はい。『バーニング』、村上春樹さんの『納屋を焼く』の独自解釈による映画化ということで、詳しくは私の評を聞いていただきたい。あと今週中には公式の書き起こしもまたいつも通り上げますんで、そちらを参照していただきたいんですが。まあ今回、関連作として挙げようと思うのは、主人公のジョンスという非常に貧しい農村部出身の青年…なんというか、ボーッとした、ちょっと”薄暗い受け身感”というのかな?起こる出来事に対して非常に受け身なスタンスなんですね。ちょっと半開きの口で。

でも、何かがあるとちょっと、彼的には内面でいろいろと思っているんだろうけど、そのリアクションを最後の最後まで直では出さないという、まあそういうキャラクターなんですけども。それを演じるユ・アインさんという方。この方はそれまでもいろいろな役をやられているんですけど、今回の朴訥としたというか、この垢抜けない感じというのは、いままでの役柄とだいぶ雰囲気が違うんですね。

で、そのユ・アインさんが悪役に挑戦した作品というので、2015年の『ベテラン』という作品。これはリュ・スンワンという僕も大好きな監督の2015年の作品。これは大スターのファン・ジョンミンが刑事で、ユ・アインさんは悪役に挑戦していて。ものすごい大富豪の青年で、こいつがもうお金持ちで性格が最悪…っていうか、やることなすこと最低最悪な野郎で、とにかくブッとばすしかねえ!こいつ、ブッ殺す、もしくはブッとばすしかねえ!っていう役柄なんですけど。本当に憎々しく演じていて素晴らしいんだけど。

僕はこの『ベテラン』を観た時に、ずーっと何週間か、このユ・アインさん演じる悪役が、日本のラッパーのKEN THE 390―最近結婚されましたけども―とにかく「KEN THE 390に似ている!」ってずっと騒いでいた、っていうね(笑)。まあ熊崎くんには一切ピンと来ない、ありとあらゆる意味でピンと来ない投げかけで申し訳ないんですけども(笑)。ただ、KEN THE 390の感じをご存知の方は、この『ベテラン』におけるユ・アインさんの、チョ・テオという大金持ちの悪役。これを見たら「ああっ!」って納得してくれるんじゃないか、と思う内容でございます。

あとですね、この『バーニング 劇場版』で、ベンという非常に謎めいた金持ちの青年。まあ最終的には彼がちょっと、「時々、ビニールハウスを焼くんです」っていう性癖を告白するんですけど。その「ビニールハウスを焼く」っていうことが、「えっ、それってひょっとして、人殺しのメタファーなの?」っていう感じになる。これがサスペンスを生んでくるんですけども。この不気味な金持ち青年ベンを演じているスティーブン・ユァンさんという方は、アメリカのテレビシリーズ『ウォーキング・デッド』という、ゾンビ物がありますよね。フランク・ダラボン製作。熊崎くんも『ウォーキング・デッド』、聞いたことあるでしょう?

熊崎風斗:
もちろんです。

宇多丸:
『ウォーキング・デッド』で彼は非常に名前を上げた方なんですね。中に出てくるアジア系の青年で、非常にナイスガイ、グレンという役で。劇中のキャラクターの中でもいちばんのナイスガイ、これで名前を上げた。で、シーズン7のエピソード1でね、「ううう…」っていうね。ちょっと言いませんけどね。「あのナイスガイが…」っていう結末を迎えるという。

ただ、スティーブン・ユァンさん的にはやっぱりその、ただナイスガイで名前が知られちゃったんで、そこに役柄的には不満を感じていたというか、もっと複雑な役をやりたいなというところでの、今回の『バーニング』のベン役、ということらしいので。ぜひそのギャップも、この『ウォーキング・デッド』を改めて観て…もちろんドラマとしての面白さはもう折り紙付きでございますので、よろしいじゃないでしょうか。

あとですね、監督のイ・チャンドン。いろいろと他の若手監督のプロデュースなんかも積極的にやられている方で。U-NEXTの中だと、2014年『私の少女』というペ・ドゥナ主演の、チョン・ジュリさんという方が監督・脚本の作品があるんですけど。これね、はっきり言います。私、当時ムービーウォッチメンでガチャに何週間も入れたんですが、当たらず。そのまま…観ていなーい!(笑)

観ていなかった。「イ・チャンドンのファン」とか大声で怒鳴りちらしておきながら、『私の少女』を見ていないというこの失態。この状態で私ね、『バーニング 劇場版』評に臨んだ。これは大変な欠陥でございまして。なので、U-NEXTで『私の少女』、まだ観ていないものが観られる!っていうことで、こちらを観たいなと思っている次第でございます。

あと、劇中で主人公のジョンスがこれ、原作の『納屋を焼く』にもあるセリフなんですけども。その謎の金持ち青年…非常に不気味なんですね。なにをやってる金持ちなのかもよくわからないし、はっきりと言わないんですよ。「まあ、いろいろとやってますね。あえて言えば、遊んでますね」なんつって。そういう謎の金持ち青年を指して「『ギャツビー』だな」って言うわけです。これは当然、スコット・フィッツジェラルドの『華麗なるギャツビー』を示しているわけですね。

というわけで『華麗なるギャツビー』、何回か映像化版がありますけども、ここではあえて1974年、ロバート・レッドフォード主演版の『華麗なるギャツビー』。こちら、おすすめしたい。これ、監督がジャック・クレイトンさんという方。この方の監督作として非常に有名なのは、『回転』という白黒のホラー映画なんですけど、「ホラー的表現のルーツ」と言われているんですね。これ、めちゃめちゃ怖い作品なんですよ。

そんなのを撮っている方の作品で。「あの『回転』を撮ったジャック・クレイトンだ」っていう目で見ると、『華麗なるギャツビー』、オープニングでギャツビーがもう…物語の後の時間軸で、ギャツビーが住んでいた屋敷がもう人気がなくなった後のところから、オープニングクレジットなんですよ。

ここからもうすでに、怖いんですね。ちょっとある意味、一種の「心霊映画」…三宅隆太監督が言う広義の心霊映画としても観られるような『華麗なるギャツビー』、というか。あの有名な緑色の光とかも、なんかジャック・クレイトンが撮ると、ちょっとホラーみたいだな、怖いなっていう風に思えたりする。いまの視点で観るとね。といったあたりで、あえての1974年版の『華麗なるギャツビー』も参考作として挙げさせていただきました。今回は以上4作品というか。『ウォーキング・デッド』はテレビシリーズなんですけども、4作品を挙げさせていただきました。

…それこそ『華麗なるギャツビー』とディカプリオが主演版の『グレート・ギャツビー』、2013年のがありますよね。あれとやっぱり同じ原作でアプローチの違い、みたいなのは…僕、この『ギャツビー』もガチャが当たらなくて。迎撃体制を完璧に固めてて、これまでの映像作品も、あと原作も訳違いで読み込んでいたりとかしてやろうとしていたのに、スカッちゃったんですけど(笑)。そういう『ギャツビー』みたいに、「同じ原作でこう違う」みたいなのも手軽にできるのがいいところですからね。

熊崎風斗:
見比べることができるんですね。

宇多丸:
ぜひぜひ、そういう楽しみ方もしていただけたらどうでしょうか。

ということで、今週金曜の夜6時半からのムービーウォッチメンは『ラ・ラ・ランド』、そして『セッション』などでおなじみデイミアン・チャゼル監督最新作『ファースト・マン』です。

■宇多丸推薦! 『バーニング 劇場版』の次にU-NEXTで観るべき映画
  • 『ベテラン』リュ・スンワン監督/2015年
  • 『ウォーキング・デッド』フランク・ダラボン監督ほか/2010年~
  • 『私の少女』チョン・ジュリ監督/2014年
  • 『華麗なるギャツビー』ジャック・クレイトン監督/1974年
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