【2018.12.17放送】『来る』をもっと楽しむための課題映画6選!

【2018.12.17放送】『来る』をもっと楽しむための課題映画6選!

宇多丸:
先週金曜日のムービーウォッチメンで扱ったのは、中島哲也監督の最新ホラー『来る』。こちらをもっと楽しむための作品をいくつかご紹介いたします。

まあ、中島哲也さんはもともとCMディレクターとして、非常に、もう圧倒的な実績を残されている方で。最初にその彼を映画監督に抜擢したのが、森田芳光監督。『バカヤロー!』っていうオムニバスシリーズで、「これからは異業種の中から面白い人が出てくるだろう」ということで、中島哲也監督とか、それこそ堤幸彦監督とか、そういう人をフックアップして、っていうところが実は最初だったりするんですよね。だからちょっと(先週までやっていた)森田芳光全作品上映とも関連しているような話でございました。

で、その『来る』の評の中で、中島さんのフィルモグラフィは非常に一貫した作家性が明白にあるんだけど、それが微妙に、あるポイントから構造が反転しているように感じる、みたいなことを言いました。初期作品の、たとえばですね、U-NEXTで観られるあたりでいうと、劇場デビュー作の2004年の作品『下妻物語』とか。あとは2006年の『嫌われ松子の一生』。

このぐらいのラインだと、日本社会の現実みたいなものを「ポップな」オブラートに包んで提示する、っていうね。そのままだと貧乏くさかったり、そのままだと悲惨な感じだったり…それこそ『嫌われ松子の一生』とかはものすごい昭和の悲惨な、なかなか幸薄い女性の一生みたいな話で。いわゆる演歌的な世界というか、そういう描き方をしてもいいんだけど。それを、ものすごくポップなオブラートに包んで提示してみせる。それはもう中島さんの、あるところまでの作家性だったと僕は思っているんですけど。

それが、2010年の『告白』っていう作品、これは本当に賛否両論が巻き起こりましたけど、間違いなく中島さんが映画作家として完全にネクストレベルに達した一作だと思うんですけど、ここから、その構造がちょっと逆転をして。すごくポップに、もうミュージックビデオとかCMのように、ポップにきれいに作り込んだ映像、音楽とのマッチング、みたいなところの向こう側に、本当の醜い現実社会みたいなものを照射してみせるという。視点・構造がちょっと逆になった、という風に思っていて。

そのポップを通した…「悪意のあるポップ」みたいなことを僕は言っていますけど、悪意を込めたポップ表現っていうか。日本社会に対する批評的視線みたいな。まあ、愛憎入り交じるっていう感じでしょうね。だって、ご自身がCMディレクター出身で、たとえば2014年の『渇き。』っていう作品の中だと、劇中で住宅の宣伝。「○○ホーム」みたいな、テレビでやっている幸せそうな家族みたいな。で、それが完全によくできたCM風に提示されるんだけど、それがものすごい皮肉を効かせた描写になっていたりとか。

ご自身の出自、要するにCMディレクターという、ポップであり、きれいきれいな表層を作り出す、というその仕事そのものの中から出てきた人なんだけど、そこに対する愛憎というかね。なんかちょっと皮肉な、批評的視点みたいなのが中島作品の見ていて面白いところかなと思うあたりなので。ぜひちょっとこの2004年の『下妻物語』、2006年の『嫌われ松子の一生』。これが第一期とするならば、『告白』以降の2010年の『告白』、そして2014年の『渇き。』、そして今回の『来る』という、この流れで観るとなかなか面白いものがあったりするんじゃないかなと思ったりします。

あとですね、劇中でいろいろと中島さんがいろんな映画のオマージュっていうのをしているんじゃないか、みたいなところで。前回の『ヘレディタリー/継承』の時にも『エクソシスト』が出てきましたけど、今回もやっぱりその『エクソシスト』風のね、なにか蒸気っていうか瘴気のような煙が、フワーッと建物の前に漂っている、みたいな描写は『エクソシスト』でしょうし。

今回で言うと、これはすいませんね。若干ネタバレくさいことを言っちゃっているかもしれませんけど、まあクライマックスというかあのあたりで、常軌を逸した量の血がドバーッて吹き出すという。絶対に現実ではありえない物理的分量の血がドバーッと吹き出す、というのは、まあもちろん1980年、スタンリー・キューブリック『シャイニング』の、とある有名なシーンのオマージュであろう、というようなね。まあ『シャイニング』はなにかと引用されることが多い作品でもありますし、もしご覧になったことがない方がいるとしたら、ひとつの現代ホラーの金字塔として…これも当時賛否が非常に分かれた作品ですけども、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

あとね、それこそ森田芳光連続上映もそうですけど、やっぱりみなさん、もちろんそういう見方を普通の映画ファンだったらしている人もいるでしょうけど、ある作家の作品を順繰りに、製作年度順に連続して観ていくと、最初に1本だけ観ている時には気づかなかったこと、その作家に通底するテーマだったり手法だったりが見えてきたりするので。ぜひそういう見方、いまだったら配信サービスで気楽にできるわけですから。おすすめしたいあたりでございます。

ということで、今週金曜の夜6時半からのムービーウォッチメン、課題作は塚本晋也監督『斬、』でございます。塚本監督もまたこれ、線で観ると面白い作家ですからね。

■宇多丸推薦! 『来る』の次にU-NEXTで観るべき映画
  • 『下妻物語』中島哲也監督/2004年
  • 『嫌われ松子の一生』中島哲也監督/2006年
  • 『告白』中島哲也監督/2010年
  • 『渇き。』中島哲也監督/2014年
  • 『エクソシスト』ウィリアム・フリードキン監督/1973年
  • 『シャイニング』スタンリー・キューブリック監督/1980年
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