【2018.11.12放送】『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』をもっと楽しむための課題映画3選!

【2018.11.12放送】『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』をもっと楽しむための課題映画3選!

宇多丸:
先週金曜、私がムービーウォッチメンで扱いましたのは、アジア各国でタイ映画史上最大のヒットを記録した『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』。こちらの関連作をご紹介したいと思います。

これね、元SKE48の加藤るみさんが「おすすめ東南アジア映画」という流れでご紹介いただいて。その時はまだ公開前だったんですけど、まあ加藤さんの説明と予告映像がめちゃめちゃスタイリッシュで。観るだに「おっ、これは面白そう!」ってなりましたよね。で、実際に観たら本当に面白くて。どんな風に私が面白かったのかというあたりは、ぜひムービーウォッチメン。音声か公式の書き起こしをチェックしていただきたいんですが。

で、関連作という意味では、その加藤るみさんがその時、この『バッド・ジーニアス』と同じ時に並んでご紹介をいただいた、同じくタイ映画。これも近年の作品ですね。『すれ違いのダイアリーズ』という2014年のタイの作品。こちらをまずはご覧いただいて、並べて見るといいんじゃないでしょうか。全然内容とかトーンとかは違うんですけど、どちらも教育現場というか学校を舞台にしている話、というところでは非常に共通しますし。

こちらの『すれ違いのダイアリーズ』、メインの舞台は、ものすごい田舎の、水上学校なんですね。湖のボートの上に学校があるという。で、当然のことながら結構貧しめの村落で。子供によっては全く教育の重要性とか、ましてや高等教育への進学っていうことは頭になかったりするような、そういう状況。だから『バッド・ジーニアス』で描かれたような、お金を出してカンニングしてでも海外へ留学して、そこで学歴をつけないと勝負できない、みたいな熾烈な世界とはちょっと違う、のんびりとした世界。そこがベースではあるんだけど。

主人公は2人いて、男の教師と女の教師、それぞれが違う時間軸で、同じところで教えていて。最初はその女の教師が教えていて、それでいろいろと苦労したことをノートにつけていて。それを後から来た男の教師が見つけて、それを読んで勇気づけられて。次第に会ったこともないのに恋心が芽生える…みたいな話なんですけども。で、その女性の教師の方が、都会の学校に行ったりすると、やっぱり結構いろいろと…「そういう教え方はするな!」とか、親御さんが出てきたり、まあ日本でも全然通じるような、結構うるさ型の管理教育、みたいなのがやっぱりあるという。そういうタイの教育事情みたいなものが透けて見える、という意味でも、『バッド・ジーニアス』と並べて見るにはいいんじゃないでしょうか。基本的にはロマンティックコメディーというか、『ユー・ガット・メール』とか、それこそ森田芳光さんの『(ハル)』とか…あとは、時間軸が違う手紙を通じてなにか恋心が生まれるという意味では、『イルマーレ』とかに近い感じだけど。まあ、非常によく出来た、ほっこりする、あたたかい気持ちになる、素晴らしい作品だったんじゃないぁ。

あとは、監督のナタウット・プーンピリヤさんが、映画監督を志すにあたって最初に衝撃を受けた作品として(インタビューなどで挙げている)、マーティン・スコセッシの『グッドフェローズ』という1990年のアメリカの作品。私はこれ、常に生涯トップ級に入れておりますが。もし、これをご覧になったことがない方がいたら…とにかく、この『バッド・ジーニアス』とかでも出てくるような、今風の映画のカッティングとか編集技術みたいなものは、全てこの『グッドフェローズ』が確立した、と言っても過言じゃないという。その意味でも観て損はない。1990年代以降の世界の映画文法を作った、と言っても僕は過言ではないと思っています。この延長線上にタランティーノとかも出てくる、と言って過言ではないと思っています。すさまじい作品だと思います。

あと、起こっている状況はすごくミニマムなのに…起こっていること自体はありふれているし、小さなことなのに、それを見せる手腕があまりにも優れすぎていて、超スペクタクルだし超サスペンス!っていう例で、ポン・ジュノの『母なる証明』の中の一場面を例に出しましたが。ぜひこのジンテ邸脱出のくだりという、これをぜひ。とにかく、ただのお母さんが寝ている若者2人の間をぬって家を出るっていう、それだけのくだりが、こんなにもスリリングなシーンになるのか!っていうあたり。ぜひご覧いただければと思います。

以上、今日は3本にしましょうね。

そして今週金曜、夜6時半からのムービーウォッチメン、扱うのは『ヴェノム』です。

 

■宇多丸推薦! 『デス・ウィッシュ』の次にU-NEXTで観るべき映画

  • 『すれ違いのダイアリーズ』(ニティワット・タラトーン監督/2014年)
  • 『グッドフェローズ』(マーティン・スコセッシ監督/1990年)
  • 『母なる証明』(ポン・ジュノ監督/2009年)

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