【2018.10.29放送】『若おかみは小学生!』をもっと楽しむための課題映画2選!

【2018.10.29放送】『若おかみは小学生!』をもっと楽しむための課題映画2選!

宇多丸:
先週金曜のムービーウォッチメンで扱ったのは、口コミでものすごく広がった、『若おかみは小学生!』。

この番組では毎回、「リスナーカプセル」として、リスナーから(宇多丸に)観て欲しい映画のリクエストをいただくのね。で、メールを毎回たくさんいただいて、どれを選ぶかという時、やっぱり基準となるのは「熱量」。あとはその分量ですよね。熱量が高いメールがたくさん来れば、「これだけたくさん来たんだから入れようか」みたいになったりすることがあるんですけど。

で、まさに『若おかみ』は、ものすごい熱量のメールが、しかも複数週に渡っていっぱい届いていて。もちろん、それ以外での評判も伺っていましたし、という感じで取り上げさせていただきました。本当に素晴らしい作品でございました。

で、『若おかみは小学生!』の評の中で触れた作品を紹介させていただきます。まずは今回、久々に劇場用作品を監督された高坂希太郎さんという方。この方はスタジオジブリの数々の作品の作画監督としても、もう本当に歴史的仕事の数々を残されてる方なんですね。で、高坂希太郎さんの監督作といえば、劇場用長編作品としてはこれがデビュー作になるのかな?2003年の『茄子 アンダルシアの夏』という作品。これ、ちょっとでも絵面を見ると、「ああ、ジブリの人だな」ってわかる感じの絵面でしょう? 高坂さんは宮崎駿さんの薫陶を直接受けて、腕を磨かれた方ですから。

で、これは絵を見ればわかるように、自転車レースの話なんですね。そんなに長くない作品(47分)なんだけども、その作品全体が、自転車レースのシーンだけでできているっていう話なんですよ。スペインで開かれる自転車ロードレース。(最初から)もうロードレースが始まっている状態で、47分間の間に、自転車ロードレースというものを…それこそ実況アナウンサーとしての熊崎くんに言うなら、スポーツとしての自転車ロードレースの面白み、妙味の部分とかがばっちり描かれてます。チームを組んで…ほら、先に走らせる人とか、そのために風よけになったりとか、そういうチームワークがあったりするじゃないですか。あるいは、ずっとチームの中に所属し続けることの、プロスポーツ選手としての葛藤の話であるとか。

加えて彼の個人的な…大泉洋さんが声を当てている主人公ペペは、故郷にレースしに来ているんだけど、そこに残してきた諸々のわだかまりの件とか。47分間に、そういう自転車レースの進行と、人間ドラマの横軸が同時に進行していって、最後はクライマックス。ゴール手前になると、本当にアニメならではの表現が全開になる。

そこはさすが高坂さん、自転車をこいでいるだけで、めちゃくちゃ画が気持ちいいんですよ。最後にわーっとラストスパートをかけるところで、アニメならではの表現として、どんどん線がガーッとワイルドになってきて、ものすごい高揚感…まさに法悦状態に(笑)。エクスタシー状態みたいなものが表現されたりする。などなど、僕はすごい大好きな作品です。『茄子 アンダルシアの夏』は今回の『若おかみは小学生!』と全くタッチとかトーンは違う作品ですけど、ぜひ今回の作品で高坂さんの腕前に唸られた方は、ご覧になってはいかがでしょうか?

あと、劇中で何度か「連想しました」ということで引用した、『海街diary』。これはもちろん吉田秋生さんの人気コミックで、今年6月にようやく完結いたしました。ですが、僕が今回引き合いに出しているのは、是枝裕和監督の2015年の実写映画版ですね。で、主人公のすずちゃんを広瀬すずさんが演じているんですけど。

その立場がちょっと、『若おかみは小学生!』の主人公のおっこちゃんと似ているんですね。親を亡くして身寄りがなくなった状態になっちゃって、親類のもとに身を寄せることになるという。で、ここもすごく似ているんだけど、彼女は親を亡くして天涯孤独になっているんだけど、傍目からは、すごく大丈夫そうに見える。しっかりしてるように見える。できた子なんですよ、実際に。

で、『若おかみは小学生!』のおっこちゃんはまだ小6なんで、ひょっとしたら悲しみを処理しきれなくて、自分の心に無意識に抑え込んでいるのかもしれない。『海街diary』のすずちゃんも、見た目はすごく気丈に振る舞っているんですね。

『海街diary』はこれ、原作だと結構序盤の方で、親を亡くした悲しみで泣いたりする場面があるのを、実写版だとそういう場面をなしにして、ずっと気丈に振る舞っている。なんだけど、クライマックスで初めて、彼女が感情をわあっと…「本当は悲しいんだ!」っていうのを吐き出す、というクライマックスがある。それはまさに、『若おかみは小学生!』も原作だと主人公のおっこちゃんが初めて旅館に来た時に1人で泣く、っていう場面があるのを、それはなしにしたのと同じですよね。彼女が感情を吐露するのをもうちょっと後に持ってくることで、しっかりしすぎているところが逆に心配になるというか、それ自体がサスペンスになるという、そういうつくりになっているというね。

なので、僕は構造としてもすごく重なるところが多い作品だな、という風に思いましたので、是枝裕和さんの『海街diary』も参考作品として挙げさせていただきました。今回はこの2本にしておきましょう。

熊崎風斗アナ:
この2本とも、全てU-NEXTで観ることができます。

宇多丸:
そして今週金曜、夜6時半からのムービーウォッチメン、課題作はブライアン・ガーフィールドの小説を映画化したチャールズ・ブロンソンの『狼よさらば』のイーライ・ロスによるリメイク『デス・ウィッシュ』です!ウハハハハハハハッ!

熊崎風斗アナ:
以上「UTAMARU-NEXT」でした。

 

■宇多丸推薦!『若おかみは小学生!』の次にU-NEXTで観るべき映画

  • 『茄子 アンダルシアの夏』(高坂希太郎監督/2003年)
  • 『海街diary』(是枝裕和監督/2015年)
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